V-POP新星UPRIZEが示す「熱狂」の正体:ファンダム経済と大衆性のジレンマを解く
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V-POP新星UPRIZEが示す「熱狂」の正体:ファンダム経済と大衆性のジレンマを解く

ニュースの概要

ベトナムの音楽シーンにおいて、新人グループ「UPRIZE」の台頭がこれまでの市場ルールを塗り替えています。従来のV-POPは、YouTubeの再生回数やテレビ放送を通じた「大衆的な認知度」が成功の絶対的な指標とされてきました。しかし、UPRIZEは広範な一般層への浸透よりも先に、特定の熱狂的なファン層を構築し、そこから強固な収益基盤を生み出すことに成功しています。この現象は、東南アジアのエンターテインメント市場が、マスメディア主導のモデルから、個人の熱量に依存する「ファンダム経済」へと完全に移行したことを象徴しています。一方で、コアなコミュニティの外側にいる一般大衆にどのように存在感を波及させるかという、デジタル時代のアーティストが直面する共通の課題も浮き彫りになりました。

参考: V-POP市場のパラダイムシフト|新人グループ「UPRIZE」が証明したファンダム経済と「大衆的認知」の課題(asiaent.net)

分析・見解

「広く浅く」より「狭く深く」が勝つ市場構造への転換

UPRIZEの成功が示しているのは、市場の「深さ」が「広さ」を上回り始めたという事実です。かつてのベトナム音楽市場では、国民的なヒット曲を生み出すことが最大の目標でした。しかし今はストリーミングとSNSのアルゴリズムによって、人々の好みが細かく分かれています。この状況では、100万人になんとなく知られているよりも、1万人に「人生の一部」だと思われるほどの熱量を持たれる方が、ビジネスとして長続きしやすくなります。UPRIZEはこの「熱量の純度」を、デビュー前からデジタルプラットフォームを使って育ててきました。

ファンの当事者意識を生む設計と、内輪化という副作用

具体的には、K-POPが確立してきたファンによる育成・応援のプロセスをV-POP向けに調整し、ファンが「自分たちがアーティストを育てている」という当事者意識を持てるように設計しています。これは音楽を提供するだけでなく、体験を分かち合う価値への転換です。ただし、ここで生じるのが内輪で盛り上がる「サイロ化(=閉じた輪の中だけで熱が高まる状態)」という副作用です。特定のコミュニティの中で熱狂が強まるほど、外部の一般の人には「内輪の盛り上がり」に見えてしまい、幅広く話題が広がりにくくなります。これはかつてのAKB48や現在の日本のアイドルシーンが直面した課題と同じですが、ベトナムのような成長市場では、この大衆性の欠如がスポンサー獲得や大規模イベントの集客の妨げになる懸念があります。

ブロックチェーンでファンの熱量を可視化し経済価値に変える

技術的な視点で見ると、今後はブロックチェーンやNFTを使って「ファンの貢献を目に見える形にする」ことが、このジレンマを解く鍵になるでしょう。大衆に合わせて音楽性を薄めるのではなく、ファンの熱量をデジタル資産として証明し、それを外部の経済とつなげることで、知名度の低さを経済的な効果で補う戦略が求められます。UPRIZEの事例は、V-POPが「聴くコンテンツ」から「参加するプラットフォーム」へと進化したことを示す、歴史的な転換点だと言えるでしょう。

ビジネスへの影響

「ベトナムの若者全体」ではなくマイクロコミュニティの解像度で狙う

企業の意思決定者にとって、UPRIZEの事例は「ターゲットの解像度」を見直す重要な教訓を含んでいます。もはや「ベトナムの若者全体」という曖昧な区分けは機能しません。特定の価値観を共有するマイクロコミュニティにいかに深く入り込むかが、投資対効果(ROI)を最大化する近道です。特に従来の広告モデルに頼ってきたブランドは、ファンコミュニティとの「共創」へと軸足を移す必要があります。例えばUPRIZEのようなグループを起用する場合、単に広告に出演させるのではなく、ファンがSNSでシェアしたくなるような「余白」のあるキャンペーンを設計することが欠かせません。

D2Cで独自の熱量経済をつくり、コア層をブランドの伝道者に

また、決済の仕組みが整いつつある東南アジアでは、デジタルコンテンツやファン限定グッズを企業が直接消費者に販売する仕組み(D2C)が急速に広がっています。企業はプラットフォームに手数料を取られるモデルから抜け出し、独自のファンとのつながりの仕組みを築く好機を迎えています。UPRIZEが直面している「大衆的な認知の課題」は、裏を返せば「競合他社が入り込みにくい独占的な市場」を築けている証拠でもあります。経営層は短期的な到達人数に惑わされず、顧客生涯価値(LTV)の高いコア層をいかに獲得し、彼らをブランドの伝道者に育てていくかという戦略にリソースを集中すべきです。

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